かつて白衣の天使と呼ばれ、戦乱の中負傷兵に献身的な看護を行なった人物、ナイチンゲールの名は誰もが一度は聞いたことがあるだろう。ナイチンゲールの取り組みは、現代の看護師の重要な基盤となっており、多大な功績を残した偉人として称えられている。
実際に、ナイチンゲールは19世紀中期、献身的な看護に留まらず、改革者として医療体制を整えたことで知られている。その取り組みにより、クリミア戦争にてイギリス軍の兵士の死亡率を下げたといわれている。
たとえば、現代の医療現場では常用的に配備されているナースコールというシステムも元々ナイチンゲールが考案したシステムだ。ナースコールだけではなく、資料統計を用いて導き出した院内設備への改革も行っている。具体的には、調理設備、下水道設備、空調設備、照明器具などに目を向け、隅々にまで徹底した衛生改革を実施している。
その結果、院内衛生は大きく改良され、大勢の人々の生命を救う結果につながったのだ。現代の病院では衛生面に気を配るのは当然なことだろう。しかし当時は衛生面にすら目が向いておらず、劣悪な療養環境だった。そんな中、衛生面に気を遣った看護の在り方は、画期的な発想として称賛されるまでに至った。
まさにナイチンゲールは、看護師でありながら現代の病院の基盤をも作った人物なのだ。活動範囲は外部にまで及び、戦地での人員・物資・食糧が足りないと、国防に掛け合ったこともあったとされる。
ナイチンゲールの行いは、現代よりも女性の地位が低かった中世においても称えられ、女性の地位、また看護師の地位の向上にも影響を与えている。そんな彼女は生涯独身を貫き、晩年は看護学校の生徒や、甥や姪に囲まれ穏やかに過ごし、齢90歳にして充実した濃厚な生涯を終えた。